オーナーチェンジ(賃貸中)物件のメリット・デメリット

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オーナーチェンジ物件とは

不動産の居室内にオーナーと賃貸借契約を締結した入居者が住んでいる売り物件を「オーナーチェンジ物件」といいます。業界用語では賃中(ちんちゅう)などとも呼ばれます。

オーナーチェンジ物件を購入するとどうなるのか

オーナーチェンジ物件を取引した場合、入居者の賃借権は引き継がれるので、引き続き入居したままとなります。

借地借家法第31条(建物賃貸借の対抗力等)

建物の賃貸借は、その登記がなくても、建物の引渡しがあったときは、その後その建物について物権を取得した者に対し、その効力を生ずる

前所有者から引き継ぐ義務

したがって、買主は売主(賃借人)が入居者(賃借人)に対して負う次のような義務の一切を引き継ぎます

  • 建物を使用させる義務
  • 建物を修繕する義務
  • 退去時の敷金返還義務
  • 使用者責任(民法第717条)

ちなみに使用者責任とは、例えば建物の欠陥が原因で入居者や第三者が損害を受けた場合に、他に誰も責任を取る人がいない時に究極的に所有者が責任を負わなければならないという民法の規定です。

民法第717条(土地の工作物等の占有者及び所有者の責任)

土地の工作物の設置又は保存に瑕疵があることによって他人に損害を生じたときは、その工作物の占有者は、被害者に対してその損害を賠償する責任を負う。ただし、占有者が損害の発生を防止するのに必要な注意をしたときは、所有者がその損害を賠償しなければならない
前項の規定は、竹木の栽植又は支持に瑕疵がある場合について準用する。
前二項の場合において、損害の原因について他にその責任を負う者があるときは、占有者又は所有者は、その者に対して求償権を行使することができる。

例えば、建物の外壁や看板が剥がれ落ちて通行人に当たった、建物の階段が壊れて入居者が落下した、建物に構造上の欠陥があったため地震で建物が倒壊した、といったようなケースです。

仮に建築業者や前所有者の維持管理に問題があった場合でも、損害が発生したその時の所有者が責任を負う、というのが所有者責任です。

この所有者責任は特にオーナーチェンジ物件でなくても当然に負う責任ですので、細かい解説はしません。

前所有者から引き継ぐ権利

また、次のような権利の一切を引き継ぎます

  • 取得した日以降の賃料債権
  • 退去後に建物の返還を受ける権利
  • 退去後に入居者に原状回復を行ってもらう権利

つまり、そっくりそのままオーナーの立場が入れ替わることになり、入居者にとっては売買があった前後でも振込先が変わる程度で特に変化はありません。オーナーだけが変わる(チェンジする)、だからオーナーチェンジなのです。

オーナーチェンジ物件のデメリット

賃貸中の物件を購入する場合、次のようなデメリットがあります。

  • 室内の確認ができない
  • 家賃保証されていない場合がある
  • 借家賠償が契約されていない場合がある
  • 入居者の属性等が正確に把握できない

室内の確認ができない

賃貸中の物件は入居者が占有している状態のため、いかに所有者であっても勝手に中に入ってはいけません

設備が思っていたより古い場合もありますし、室内が汚れてボロボロになっている可能性もあります。

家賃保証されていない場合がある

特に入居者の居住年数が長い物件では、家賃保証会社との間で保証委託契約が締結されていない場合が多いです。その場合家賃を滞納されると自分で督促や明渡しの手続きを取る必要があります。

借家賠償が契約されていない場合がある

通常賃貸借契約書の中で賃借人(入居者)が借家人賠償責任保険(借家賠償)に加入する必要がある旨の記載があり、入居時には「火災保険料」として2年間の保険期間で2万円の家財保険・借家賠償保険に加入しています。

しかし、長年(2年超)入居している場合、これらの保険契約の期間が満了し、入居者が更新手続きを行っていなかったり、更新保険料を支払っていない場合があります。

もちろん、火災を起こされた場合でも所有者自身が建物に火災保険を掛けていれば問題ありませんが、例えば入居者が洗濯機の水栓から水漏れを起こして下の階の入居者の家財道具が濡れてしまったという場合、通常の火災保険の漏水特約は建物設備の故障や水道管の破裂等に由来する事故が補償対象となるため、所有者側の火災保険でカバーされない可能性が高いです。

入居者の属性等が正確に把握できない

空室の物件に新たに入居者の賃貸募集を行う場合、入居の段階では入居申込書等でどのような方か審査することができます。

しかし、オーナーチェンジ物件を購入する場合、購入前に入手できる情報としては賃貸借契約書のコピーくらいしかありません。また、個人情報保護の観点から、仮にコピーをもらっても氏名・勤務先・電話番号等の部分は塗り潰してあるのが一般的です。

オーナーチェンジ物件のメリット

逆に、次のようなメリットがあります。

  • 相場より安く物件を買える場合がある
  • 家賃が相場より安い場合、退去後は物件の価値が上がる
  • 借り上げや家賃保証を受けている場合、解除すれば価値を上げられる

相場より安く物件を買える場合がある

仮に空室の場合の相場が1700万円前後の木造戸建があったとします。

この不動産に賃料9万円で賃貸がついていた場合、年間の賃料は

9×12=108(万円/年)

となります。これを利回り11%で換算すると、

108÷0.11≒982(万円)

となります。

この場合、相場1700万円の物件が賃貸が付いていることで相場が700万円以上落ちることになります。

このような物件を購入して保有することで、家賃をもらい続け、退去後には家賃を値上げして募集したり、相場の値段で売却するという選択肢を取ることができます。

家賃が相場より安い場合、退去後は物件の価値が上がる

相場より安い賃料で賃貸中なことはよくあります。

賃貸中の物件の場合は内装の状態が把握できないため、家賃が安めに付いていると「内装はそんなに綺麗じゃないな」とある程度の想像を付けられますが、仮に内装が古かったとしてもそれでも家賃が安すぎる、という場合もあります。

そういった物件が相場利回りに還元されて売りに出されている場合、売値はだいぶ安くなります。

仮にあるファミリータイプ(3LDK)の区分所有マンションが賃貸中であったと想定します。相場賃料は12万円前後、フルリノベーションされている場合に15〜17万円程度、内装が古い場合でも10万円は下回らないだろう、という物件です。なお、この地域のファミリー物件の利回りが10%程度とし、管理費・修繕積立金の合計額は月額2万円とします。

相場賃料12万円の場合の想定売値は次のとおりです。

(12-2)×12÷0.1=1200(万円)

相場賃料10万円の場合の想定売値の場合、

(10-2)×12÷0.1=960(万円)

この不動産が仮に8万円の賃料がついていた場合、

(8-2)×12÷0.1=720(万円)

となります。

ここでピンと気づかれる方もいると思いますが、相場賃料の想定売値1200万円と8万円の賃料の場合の想定売値720万円の間には480万円の差があります。

最近はアベノミクスやオリンピックの影響で建築・内装業界の景気が良いためリフォーム代金はどんどん上がっていますが、それでも350万円程度の資金があれば3LDKのフルリフォームが可能です。

720万円で物件を購入し、退去まで利回り10%で運用し、退去後に350万円のリフォームを実施し、フルリフォーム後の賃料16万円で賃貸付けをしたとします。

16万円で賃貸をつけた場合の想定売値は、

(16-2)×12÷0.1=1680(万円)

と、相場は跳ね上がります。

実際にかかった費用は、720万+350万=1070万円となります。もちろん諸経費は除外していますが、仲介手数料は売買金額に比例するため、720万円で買うほうが1680万円で買うより経費は少なくなります。売買契約書に貼る印紙税も安いです。

したがって、1680-1070=610万円分安く仕入れられたことになります。

このように、相場より安く賃貸が付いた物件は安く物件を取得できるチャンスになります。

「なぜこういった物件を不動産業者が扱わないのか?」

と思われる方もいると思いますが、不動産業は非常に経費のかかるビジネスです。利回り10%で運用して退去まで待つという商売は資金繰りの問題で難しいので、再販業者は手を出したがらないのが実情です。

なぜ資金繰りの問題で難しいのかというと、不動産再販業者が長期で低金利の融資を引くのは困難だからです。

借り上げや家賃保証を受けている場合、解除すれば価値を上げられる

あるアパート(ワンルーム10室)があり、相場賃料が5万円とします。こういったアパートを家賃保証会社が例えば3万円で全室を借り上げ、5万円で転貸している、というケースを考えます。

このアパートの所有者へ入る月額家賃は借り上げ賃料である3万円のため、利回り10%計算して

3×10(室)×12÷0.1=3600(万円)

この金額が、このアパートの売り出し金額とします。このアパートを購入して借り上げ契約を解除した場合、賃料が5万円となるため、

5×10(室)×12÷0.1=6000(万円)

となります。

もちろん、実際の借り上げ・家賃保証契約がどのようになっているか確認する必要がありますし、転借人(実際の入居者)が支払っている家賃が借り上げ賃料と余り変わらないとさほど違いはありませんが、借り上げ契約により賃料が相場より格段に安くなっている場合はこういった考え方もできます。

オーナーチェンジ物件は要チェック

以上の通り、オーナーチェンジ物件には現在の室内の状態や契約状況が不明というデメリットはあるものの、賃料によっては利益になる場合もかなりあります。

オーナーチェンジ物件を嫌う方に理由を聞くと、多くの場合「すでに利益が出ている状態だから自分で空室物件を買って入居者を見つけるより割高な投資になりそう」というものがあります。

確かにそういうケースのほうが多いですし、全空(全室が空室)のアパートを購入して高い利回りを出している投資家もいます。

しかし、オーナーチェンジ物件にもお買い得な取引はありますので、賃貸中の物件があった場合は条件を問い合わせしてみることをおすすめします。

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