【個人事業主】不動産投資の会計処理で勘違いしがちなポイントまとめ

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投資用不動産を個人名義で取得したら、毎年1月1日から12月31日までの家賃収入を「不動産所得」として翌年の3月半ばまでに確定申告する必要があります。

個人の確定申告は慣れたらカンタンですが、所得税法が複雑なため陥りがちな落とし穴もあります。今回はそういった落とし穴を中心にまとめたいと思います(`・ω・′  )

今回は「貸方とは、〜」「貸借対照表(B/S)とは、〜」といった会計の基本中の基礎はわかっている方前提で話を進めていきますので、「貸方と借方の違い」「貸借対照表(B/S)と損益計算書(P/L)の意味」がわからない方は、簿記3級の本を買ってざっと読んで下さい(・ω・)ノ

まず、「個人事業主」と「個人事業そのもの」は別モノと考える

田中太郎さんが100%出資して株式会社田中商事を設立した場合、生身の人間である田中さん(法律上、「自然人(しぜんじん)」といいます)と、法律により作られた人格である株式会社田中商事(法律上、「法人(ほうじん)」といいます)は、完全に別人格です。

法人を設立するというのは、新しい人格をつくったのと同じことであり、人間が子供を産んだのと同じような状態になります。仮に100%出資していても田中太郎さんと株式会社田中商事は別人格ですので、法人である田中商事のお金を自然人である田中太郎さんが勝手に使ったらそれは横領になります。

同様に、個人事業主と個人事業そのものも別モノとして考える必要があります。例えば銀行口座一つにしても、それが「個人事業主が私的に使う口座」なのか「個人事業用に分けて管理している口座」なのか、現金も「個人事業主プライベートのお金」なのか「個人事業の売上金」なのかによって扱いが違います。

個人事業に「資本金」はなく、「元入金」を使う!

「資本金」という概念は主に株式会社などの法人で使う概念です。個人事業においては資本金は使いません。したがって、法人と異なり個人事業を開業した時点では仕訳は発生しません。法人であれば、資本金100万円で株式会社を設立した場合、次のような仕訳が必要になるのと異なりますね。

借方科目 貸方科目
現金 100万円 資本金 100万円

個人事業主が個人事業に事業用の資金を提供した場合、これは「元入金(もといれきん)」として計上します。例えば、田中太郎さんが不動産投資の経理用に購入した金庫に、個人(プライベート)のお金100万円を保管したとします。この時点で、

借方科目 貸方科目
現金 100万円 元入金 100万円

と処理することになります。

個人事業にプライベートのお金を使ったら「事業主借」

個人事業用に管理している金庫から現金100万円を取り出して不動産(土地50万円、建物50万円)を購入した場合、次のように仕訳します。

借方科目 貸方科目
建物
土地
50万円
50万円
現金 100万円

一方、個人事業主のプライベートの金庫に100万円を保管しているだけであり(仕訳不要)、そのプライベートのお金で上記の100万円の不動産を購入した場合、

「個人事業そのもの」が「個人事業主」の現金を借りて購入!

したことになりますので、事業主からりたお金、つまり「事業主借(じぎょうぬしかり)」という科目を使います。個人事業「」と個人事業を別モノと考える必要があるのはここにあります。

借方科目 貸方科目
建物
土地
50万円
50万円
事業主借 100万円

したがって、「現金」と「預金」は、個人事業主がプライベートに管理しているものか、個人事業で利用しているものか、しっかり区分けする必要があります。

個人事業のお金を事業主のポケットマネーにしたら「事業主貸」

その後、この不動産を同額(建物50万円、土地50万円)で売却し、売却代金が個人事業用に管理している通帳に振り込まれた場合、次のように仕訳します。

借方科目 貸方科目
普通預金 100万円 建物
土地
50万円
50万円

では、売却代金を現金で受領し、そのまま個人事業主のポケットマネーとして扱った場合はどうでしょうか。この場合は逆に「事業主した」から「事業主貸(じぎょうぬしかし)」として仕訳します。

借方科目 貸方科目
事業主貸 100万円 建物
土地
50万円
50万円

ここで勘の良い方は「事業主借を逆仕訳(取り消し)して金額を減らす方法は使えないの?」と思われるかもしれません。しかし、個人事業主の場合、基本的に「事業主貸」「事業主借」は逆仕訳で減額せず、両者ともドンドン増やしていく方法を取ります。

そうすると期中にどんどん事業主貸借の金額が増えていきますが、翌期首(翌年1月1日)に、事業主借は元入金に加え、事業主貸を元入金から差し引きます。

期首元入金 = 期末元入金 + 事業主借 – 事業主貸 + 利益

※正確には「青色申告特別控除前所得金額」です。

事業主借は事業主が個人事業に投じた金額で元入金と同じ性質がありますし、利益は個人事業自体が利益を出して増加した金額ですので元入金を増加させます。反対に事業主貸は個人事業からお金を引き出す行為ですので元入金を減らすことになります。

「最初から元入金を増減した方が便利そうだな」と思われるかもしれませんが、元入金は開業時に使わなければ基本そのままにしておき、毎期首に金額が増減するだけと思って下さい。

投資用不動産からの家賃収入は「不動産所得」として別管理する

既に店舗運営やフリーランス等の活動で事業所得がある場合、決算書を作成して事業所得を計算し確定申告をしていると思いますが、こういった方が新たに不動産投資をはじめた場合は事業所得とは別に不動産所得を管理します。

具体的には、会計ソフトで新規に「個人(不動産所得)」の設定を追加し、独立した決算書を作成するということになります。

一つの決算書にごちゃまぜに「事業所得の売上」と「家賃収入」を計上するのは誤りですので注意して下さい。

不動産を売却した際の差額も「譲渡所得」として別管理する

上記で不動産を買値と同額で売却した際の仕訳を紹介しましたが、実際には個人で投資用不動産を保有する場合は必ず減価償却する必要がありますし、またその帳簿上の金額(簿価)と同じ金額で売れることはまずなく、実際には簿価より高く売れたり安く売れたりすることが大半です。

その場合でも、売却した不動産の現在の簿価を逆仕訳して貸借対照表(B/S)上から無くすだけで処理します。

例えば、数年前に不動産を100万円(建物50万円、土地50万円)で取得し、売却月までに建物部分を10万円分減価償却していたとします。売却時の簿価は建物40万円、土地50万円となります。

この不動産を120万円(建物60万円、土地60万円)で売却して代金が事業用に管理する銀行口座に振り込まれた場合、差額の30万円は譲渡所得として申告するため不動産所得の仕訳には記載しません。したがって普通預金口座に入金された差額の30万円は譲渡所得を新たに事業主から借りた(事業主借)と考えて、次のように仕訳します。

借方科目 貸方科目
普通預金 120万円 建物
土地
事業主借
40万円
50万円
30万円

逆に、不動産を80万円(建物40万円、土地40万円)で売却したとします。土地が簿価より10万円安く売れているため、法人であれば10万円の損失(固定資産売却損)を計上しますが、個人事業主の場合は簿価との差額の損失分を事業主に貸した(事業主貸)として処理します。

借方科目 貸方科目
普通預金
事業主貸
80万円
10万円
建物
土地
40万円
50万円

差額の譲渡所得譲渡損失は、確定申告時に譲渡所得の申告書を使用して計算し、確定申告書第三表(分離課税用)に記載して申告します。

所得税と住民税はポケットマネーで支払うもの!

個人事業で利益を上げると、確定申告時に所得税がかかり、また住所地の市区町村から住民税が課税されます。

この支払は、利益を上げて得られた所得から支払うものですので、事業の経費ではなく、事業主のポケットマネーで支払います。

したがって、この所得税・住民税を個人事業で管理している口座や現金で支払う場合、事業主貸として仕訳する必要があります。所得税30万円、住民税10万円を事業用口座から支払った場合は次のように仕訳します。

借方科目 貸方科目
事業主貸 40万円 普通預金 40万円

なお、プライベートで管理しているお金で支払った場合、仕訳は不要です。

預金利息は事業主借

銀行口座に振り込まれる利息(利子)は、あらかじめ税金源泉所得税・復興特別所得税・道府県民税利子割)が差し引かれた手取り額が振り込まれます。

つまり、利息は納税済みの手取り額ですので、これを利益として申告する必要はなく、事業主のプライベートなお金として扱われます。

個人事業用に管理する口座に銀行利息が振り込まれた場合、これは個人事業主のプライベートなお金が新たに個人事業用に投じられたと考えますので、事業主借として処理します。

事業用の口座に預金利息が30円振り込まれた場合の仕訳は次の通り。

借方科目 貸方科目
普通預金 30円 事業主借 30円

なお、プライベート口座に振り込まれた利息は仕訳不要です。利息自体、納税済みのプライベートなお金だからです。利息が事業用口座の管理下に入った場合、プライベートマネーとの混同に注意すれば良いというわけです。

事業用に現金・預金を別管理していない場合の仕訳テクニック

事業用の経費は普段使いの財布から支払い、売上はそのままポケットに入れて消費しているというケースは多いと思います。

この場合、「現金・預金は全てプライベートマネー」とします。

「事業主借」「事業主貸」を使いこなす方法

開業時には仕訳はしません。

▼事業用にボールペンを100円で購入した場合

借方科目 貸方科目
消耗品費 100円 事業主借 100円

▼売上金100円をポケットに入れた場合

借方科目 貸方科目
事業主貸 100円 売上高 100円

▼通信料500円を銀行振込で支払い、振込手数料が100円かかった場合

借方科目 貸方科目
通信費
支払手数料
500円
100円
事業主借 600円

その他の、所得税や住民税を支払ったり、預金利息が振り込まれたり、預金したり口座から現金を引き出したりした場合は、事業用の取引はありませんので、仕訳は不要です。

領収書は事業主借で入力していき、通帳は不動産所得に関係のある取引のみピックアップして記載していくという手順になります。

売上を現金で受け取る商売の場合

不動産所得の場合は基本的に取引の大半は銀行口座上で行い、支払いは領収書というエビデンス(証拠)が残りますので、このやり方で良いと思います。

一方、飲食店を経営している等、売上金の大半を現金で受け取る個人事業主の場合、レジの中の現金をプライベートマネーとして管理するのは不適当ですのでこの仕訳は向いていません。きちんと事業用で管理する現金として次のように仕訳しましょう。

▼飲食店の営業を行い、本日の現金売上は30万円であった。

借方科目 貸方科目
現金 30万円 売上高 30万円

▼現金売上30万円をプライベート用の銀行口座に入金した。

借方科目 貸方科目
事業主貸 30万円 現金 30万円

今日はここまで!

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