不動産競売・強制執行に関する犯罪・刑罰の規定まとめ

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競売と犯罪

不動産競売を妨害する行為は昔から多かったため、現在では不動産競売特有の犯罪が規定されています。それをまとめてみました。

暴行罪・傷害罪・殺人罪などおよそ一般人なら誰でも知っているような犯罪は除き、「おっこんな犯罪があるんだ」っていう条文をまとめたものです。

刑法では公務の執行を妨害する罪(法学上は広義の公務執行妨害罪といいます)、後は民事執行法の罰則規定をまとめています。

刑法

  • 公務執行妨害罪(95条1項)
  • 職務強要罪(95条2項)
  • 強制執行妨害目的財産損壊等罪(96条の2)
  • 強制執行行為妨害等罪(96条の3)
  • 強制執行関係売却妨害罪(96条の4)
  • 加重封印等破棄等罪(96条の5)

民事執行法

  • 公示書等損壊罪(204条)
  • 陳述等拒絶の罪(205条)

公務執行妨害罪(刑法95条1項)

公務員の職務の執行を妨害するために公務員に対して暴行・脅迫を加えた場合に本罪が成立します。

例えば、強制執行を行っている執行官に対して「強制執行をやめないと殴るぞ」と脅迫を加えたような場合に該当します。

刑法第95条(公務執行妨害及び職務強要)

  1. 公務員が職務を執行するに当たり、これに対して暴行又は脅迫を加えた者は、3年以下の懲役若しくは禁錮又は50万円以下の罰金に処する。

「警察官の仕事を妨害したら公務執行妨害」というのはよく知られていることですが、基本的に公務員であれば公務執行妨害は成立しますし、公務員の指揮に従って職務執行に関与する補助者に対しても成立する可能性があります。また、実際に強制執行が妨害されて中断・中止とならなくても本罪は成立します。

暴行・脅迫は次のようなものも該当します。

  • 執行官の近くに物を投げつける
  • 執行官が読んでいる書類を奪い取る
  • 執行官の補助者である運送会社の作業員に暴行を加える
  • 執行官を援助している警察官に暴行を加える

公務執行妨害罪は公務員に対して暴行・脅迫を行った場合に該当するため、例えば不動産の強制執行を行っている最中に不動産を損壊させた場合は後述する強制執行妨害目的財産損壊等罪(96条の2)に該当することになります。ただし、間接的であっても不法な攻撃であれば本条における暴行にあたるとの判例がありますので、場合によっては公務執行妨害罪となる余地はあります

職務強要罪(刑法95条2項)

公務員に次のいずれかの目的をもって暴行・脅迫を加えた場合に本罪が成立します。

  • 処分をさせる目的
  • 処分をさせない目的
  • 公務員の職を辞させる目的

刑法第95条(公務執行妨害及び職務強要)

  1. 公務員に、ある処分をさせ、若しくはさせないため、又はその職を辞させるために、暴行又は脅迫を加えた者も、前項と同様とする。

公務執行妨害罪が職務の執行を妨害するのに対し、職務強要罪は処分を妨害したり処分をさせたりする場合に該当します。例えば、裁判所の職員に対し「売却許可決定を出したら殴るぞ」と脅迫を加えたような場合が該当します。

職務強要罪(95条2項)も公務執行妨害罪(95条1項)と同様に暴行・脅迫をすれば直ちに成立します。

強制執行妨害目的財産損壊等罪(刑法96条の2)

強制執行を妨害するために強制執行の対象となっている財産を損壊すると本罪が成立します。

公務執行妨害罪(95条1項)が公務員に向けられたものであるのに対し、強制執行妨害目的財産損壊等罪(96条の2)は強制執行の対象物に向けられたものとなります。

つまり、保護法益は強制執行の適正な遂行というよりは債権者の債権保護を主眼としていると言えます。

刑法第96条の2(強制執行妨害目的財産損壊等)

強制執行を妨害する目的で、次の各号のいずれかに該当する行為をした者は、3年以下の懲役若しくは250万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する。情を知って、第3号に規定する譲渡又は権利の設定の相手方となった者も、同様とする。

  1. 強制執行を受け、若しくは受けるべき財産を隠匿し、損壊し、若しくはその譲渡を仮装し、又は債務の負担を仮装する行為
  2. 強制執行を受け、又は受けるべき財産について、その現状を改変して、価格を減損し、又は強制執行の費用を増大させる行為
  3. 金銭執行を受けるべき財産について、無償その他の不利益な条件で、譲渡をし、又は権利の設定をする行為

不動産競売においては、次のような行為が本罪に該当します。

  • 債務者が競売物件の室内を損壊した。
  • 競売物件の室内に大量の産業廃棄物を搬入した。
  • 債務者が売る気がないにもかかわらず強制執行を逃れるために競売物件の不動産登記名義人を知り合いの名義に変更した。
  • 強制競売されるくらいならと知り合いに激安価格で競売物件を売却した(3号に該当)。
  • 存在しない債権をでっち上げて配当要求をさせ、債権者の配当を不当に減らそうとした。

なお、3号に該当する場合、相手方、つまり買主側も処罰されます。

強制執行行為妨害等罪(刑法96条の3)

偽計または威力を用いて、執行官の立入りや占有者の確認等の強制執行行為を妨害した場合に本罪が成立します。

刑法第96条の3(強制執行行為妨害等)

  1. 偽計又は威力を用いて、立入り、占有者の確認その他の強制執行の行為を妨害した者は、3年以下の懲役若しくは250万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する。
  2. 強制執行の申立てをさせず又はその申立てを取り下げさせる目的で、申立権者又はその代理人に対して暴行又は脅迫を加えた者も、前項と同様とする。

暴行または脅迫をした場合は公務執行妨害罪(95条1項)となりますが、本罪は暴行・脅迫をしていなくとも、偽計・威力を用いれば成立します。また、公務執行妨害罪が「3年以下の懲役」もしくは「50万円以下の罰金」のいずれかになりますが、強制執行行為妨害等罪は最大で「3年以下の懲役」と「250万円以下の罰金」が併科されます。

強制執行関係売却妨害罪(刑法96条の4)

偽計または威力を用いて、強制執行における売却の公正を害すべき行為を行った場合に本罪が成立します。

刑法第96条の4(強制執行関係売却妨害)

偽計又は威力を用いて、強制執行において行われ、又は行われるべき売却の公正を害すべき行為をした者は、3年以下の懲役若しくは250万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する。

「売却の公正を害すべき行為」となるかどうかの判断が難しい条文ですが、およそ次のような行為であれば本罪が成立すると思われます。

  • 執行官に虚偽の事実を陳述した。
  • 最高価買受申出人に競売物件の取得を断念するよう要求した。
  • 競売開始決定のあった不動産に賃貸借契約があるかのように装い、裁判所に対して取調べを求める上申書と内容虚偽の賃貸借契約書の写しを提出した。

加重封印等破棄等罪(刑法96条の5)

自ら報酬を得るため、または第三者に報酬を得させるために他人の強制執行に介入して次の罪を犯した場合、刑が加重されます。

  • 封印等破棄罪
  • 強制執行妨害目的財産損壊等罪
  • 強制執行行為妨害等罪
  • 強制執行関係売却妨害罪

第96条の5(加重封印等破棄等)

報酬を得、又は得させる目的で、人の債務に関して、第96条から前条までの罪を犯した者は、5年以下の懲役若しくは500万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する。

上記の犯罪は「3年以下の懲役」もしくは「250万円以下の罰金」または両方の併科となりますが、本罪の場合は「懲役3年→5年」「罰金250万円→500万円」と加重されます。

組織的に妨害行為を行う者に対して刑を加重する条文ですので、債務者と妨害者が共謀して上記の犯罪を犯した場合、加重封印等破棄等罪が成立するのは妨害者のみで、債務者は通常の刑が科せられます。

公示書等損壊罪(民事執行法204条1項2号)

明渡しの催告の際に執行官が施した公示書を損壊した場合に本罪が成立します。

民事執行法第204条(公示書等損壊罪)

次の各号のいずれかに該当する者は、1年以下の懲役又は100万円以下の罰金に処する。

  1. 第168条の2第3項又は第4項の規定により執行官が公示するために施した公示書その他の標識を損壊した者

なお、民事訴訟法第168条の2第3項または第4項の規定は明渡しの催告の規定となります。

陳述等拒絶の罪(民事執行法205条)

1項1号

売却基準価額の決定に関して、執行裁判所の呼出しを受けた審問の期日において正当な理由なく出頭せず、もしくは陳述を拒み、または虚偽の陳述をした者は本罪に該当します。

1項2号

現況調査を行う執行官の質問や文章提出の要求に対し、正当な理由なく陳述や文書提示を拒み、または虚偽の陳述や虚偽の記載をした文書の提示をした者は本罪に該当します。

1項3号

不動産の引渡し等の強制執行を行う執行官の質問や文章提出の要求に対し、正当な理由なく陳述や文書提示を拒み、または虚偽の陳述や虚偽の記載をした文書の提示をした債務者・占有者は本罪に該当します。

2項

不動産の占有者が正当な理由なく執行官・内覧参加者の内覧のための立入りを拒みまたは妨げた場合に本罪が成立します。

ただし、担保不動産競売の場合は抵当権設定前に賃借権に基づいて所有者から建物の引渡しを受けている場合は立入りを拒むことができます。

民事執行法第205条(陳述等拒絶の罪)

次の各号のいずれかに該当する者は、6月以下の懲役又は50万円以下の罰金に処する。

  1. 一 売却基準価額の決定に関し、執行裁判所の呼出しを受けた審尋の期日において、正当な理由なく、出頭せず、若しくは陳述を拒み、又は虚偽の陳述をした
    二 第57条第2項(第121条(第189条(第195条の規定によりその例によることとされる場合を含む。)において準用する場合を含む。)及び第188条(第195条の規定によりその例によることとされる場合を含む。)において準用する場合を含む。)の規定による執行官の質問又は文書の提出の要求に対し、正当な理由なく、陳述をせず、若しくは文書の提示を拒み、又は虚偽の陳述をし、若しくは虚偽の記載をした文書を提示した者
    三 第168条第2項の規定による執行官の質問又は文書の提出の要求に対し、正当な理由なく、陳述をせず、若しくは文書の提示を拒み、又は虚偽の陳述をし、若しくは虚偽の記載をした文書を提示した債務者又は同項に規定する不動産等を占有する第三者
  2. 不動産(登記することができない土地の定着物を除く。以下この項において同じ。)の占有者であつて、その占有の権原を差押債権者、仮差押債権者又は第59条第1項(第188条(第195条の規定によりその例によることとされる場合を含む。)において準用する場合を含む。)の規定により消滅する権利を有する者に対抗することができないものが、正当な理由なく、第64条の2第5項(第188条(第195条の規定によりその例によることとされる場合を含む。)において準用する場合を含む。)の規定による不動産の立入りを拒み、又は妨げたときは、30万円以下の罰金に処する。
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